2020年上半期(本)
書き方のスタイルを考えあぐねている内に今年も半分過ぎてしまったので備忘録として(既に忘れかけてるけど)適当にまとめたいと思います
・掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 / ルシア・ベルリン
初の邦訳作品集との事。自身の人生を反映させた苛烈かつ鮮烈な話をどこか軽妙に展開していくのが印象的。"いいと悪い"の何とも言い難い苦々しさが良かった
・リンカーンとさまよえる霊魂たち / ジョージ・ソーンダーズ
奇妙なストーリー設定と文献等からの引用という体裁が取られた文体、ユーモラスというより滑稽だけど何か物悲しくそのうえ面食らうくらいストレートなヒューマニズムが同居している独特な読み心地の作品でかなり良かった。同作者の「十二月の十日」も市井の人々の人生に生じた妙な捻れを描いた短編が多く面白かった
・楽しい夜 / 岸本佐知子編
上記作家の作品も含む海外小説アンソロジー。どれも好みの作品で良かったけど個人的には冒頭何の説明もなくボブ・ディランを連れて帰省する(その後も意味なく居座り続ける)妹と兄の重なり合わない心の交流を描くマリー=ヘレン・ベルティーノ"ノース・オブ"が不条理ながらビターな味わいがあり白眉だった
去年からぼちぼち読んでるブコウスキーも同じだけど堕落した生活の中に垣間見える美しさや固有の人生哲学を表現した作品が好きだなと再確認できた
・資本主義リアリズム / マーク・フィッシャー
ほぼ表紙につられて買った感じだったけど現状に対するアジテートがある種の熱さを感じさせるのが印象的だった(著者の最期を考えると何とも言えない気持ちになるが…)。同著者の"わが人生の幽霊たち"はやや難解かつ抽象的でとっつきづらかったけどBurialを(今更)聴き始めるきっかけになり良かった
・ジャングル・クルーズにうってつけの日:ヴェトナム戦争の文化とイメージ / 生井英考
表題通りヴェトナム戦争がアメリカに焼きつけたものをカルチャーから世間におけるイメージまで踏まえ多岐に渡り検証するもので、あらゆる文献を参照した内容の充実ぶりや海外文学翻訳風のクールな文体に痺れた
・生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 / 大谷崇
シオランについて客観的かつユーモアも交えつつ紹介するのが面白かった。五十嵐たかしくんの歌詞もそうだと思うけどネガティヴながら優れた表現には一方的なナルシズムに陥らないようなしょうもないユーモアを含むものが多いように感じる(この両者を比べるのもどうかとは思うけれど…)
思い出して文章にするのがマジでしんどいのでやっぱり読んだ直後の勢いで感想を残しておくのが良いですね…